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仙台地方裁判所 昭和57年(行ウ)4号 判決

原告 菊池行雄

被告 丸森町農業委員会

主文

一  本件訴え中主位的請求部分を却下する。

二  被告が原告及び斎藤茂吉の別紙目録記載の土地に係る昭和五三年七月四日付農地法第三条の規定による許可申請に対して同年八月三〇日にした却下処分を取り消す。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告訴訟代理人は、次のとおりの判決を求めた。

1  主位的請求

(一) 被告が原告及び斎藤茂吉(以下「茂吉」という。)の別紙目録記載の土地(以下「本件土地」という。)に係る昭和五三年七月七日付農地法第三条の規定による許可申請(以下「本件許可申請」という。)について何らの処分をしないのは違法であることを確認する。

(二) 訴訟費用は被告の負担とする。

2  予備的請求

主文第二項(ただし、「昭和五三年七月四日」の部分を「昭和五三年七月七日」としている。)及び第三項と同旨

二  被告訴訟代理人は、次のとおりの判決を求めた。

1  主位的請求の趣旨に対する答弁

(一) 原告の請求を棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

2  予備的請求に対する本案前の答弁

(一) 本件訴え中予備的請求部分を却下する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

3  予備的請求の趣旨に対する答弁

(一) 原告の請求を棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  原告訴訟代理人は、請求の原因等として次のとおり述べた。

1  主位的請求の原因等

(一) 原告は、昭和五三年七月七日、茂吉と連名で被告に対し本件許可申請をした。

(二) 被告は、本件許可申請に対して相当期間内に何らの処分をしない。

被告は昭和五三年八月三〇日付で本件許可申請を却下した旨主張するが、被告が行つた申請書の返戻は、単なる事実行為であつて、却下処分ではない。よつて、原告は、被告に対し、主位的に、本件許可申請に対する被告の不作為が違法であることの確認を求める。

2  予備的請求についての本案前の抗弁に対する認否等

(一) 原告が本件許可申請に対する却下処分についての審査請求を経ていないことは認める。

(二) 原告は、本件許可申請に対する被告の不作為につき、昭和五三年一〇月一二日、宮城県知事に対して審査請求をしたところ、同県知事は、昭和五七年六月四日、本件許可申請には瑕疵があり許可又は不許可の処分を行うことができないので被告は既に右申請に対して却下の処分をしているとの理由で、審査請求を却下する裁決をした。しかしながら、被告による本件許可申請書の返戻が却下処分に該当するとしても、これについては却下処分書の交付がなく、審査請求の対象を明確に認識しうる状態になかつた。以上の事実からすれば、原告には被告の右却下処分について裁決を経ないことにつき正当な理由がある。

3  予備的請求の原因

(一) 主位的請求の原因(一)に同じ。

(二) 被告は、昭和五三年八月三〇日、本件許可申請書を原告に返戻し、もつて本件許可申請を却下した。

(三) 被告の右却下処分(以下「本件却下処分」という。)は、申請書の記載内容から本件土地の特定ができず、事実と異なる記載があるとの理由によるものであるが、本件許可申請に右のような瑕疵はなく、実質は、本件土地の所有をめぐる原告及び茂吉と宍戸邦夫(以下「宍戸」という。)との間の紛争に不当に介入し、右所有についての予断に基づいてなされた違法なものである。

よつて、原告は、被告に対し、予備的に、本件却下処分の取消しを求める。

二  被告訴訟代理人は、請求の原因に対する認否等として次のとおり述べた。

1  主位的請求の原因に対する認否等

(一) 主位的請求の原因(一)の事実中、許可申請の日付は否認するが、その余は認める。本件許可申請の日は昭和五三年七月四日である。

(二) 同(二)の事実は否認する。

被告は、昭和五三年八月三〇日、本件許可申請を却下する処分(本件却下処分)をした。すなわち、(1)本件土地は、登記簿上は存在するが公図上は存在せず、かつ現地も確認できないこと、(2)許可申請書中利用者欄に「斎藤茂吉」、種別欄に「自作地売買」との各記載があるが、いずれも事実に反することから、不実の記載が認められることを理由として本件許可申請書を原告に返戻し、もつて右申請を却下したものである。

原告は、右申請書の返戻が単なる事実行為にすぎない旨主張するが、本件許可申請には前記(1)及び(2)の瑕疵があつたこと、更に、本件許可申請当時、本件土地は阿武隈川下流改修工事(金山築堤)予定地に含まれており、周辺の土地はすべて買収が終わつていて本件許可申請は農地法第三条第二項第二号の事由にも該当することから、被告の農業委員が以上の事情を説明して原告に対して本件許可申請の取下げを勧告したところ、原告がこれに応じなかつたため、右申請を却下する趣旨で、前記の理由を付した被告代表者名義の返戻書により本件許可申請書を原告に返戻したものであるから、右申請書の返戻は、本件許可申請の却下処分であつて、単にその撤回又は補正を促す事実行為ではない。

2  予備的請求についての本案前の抗弁

(一) 農地法第八五条の二によれば、同法に基づく処分の取消しの訴えについては審査請求前置主義が採られているところ、原告は、本件却下処分についての審査請求を経ていない。

(二) 原告が本件許可申請に対する被告の不作為につきその主張のとおり審査請求をし、宮城県知事がこれを却下する裁決をしたことは認めるが、原告に本件却下処分について裁決を経ないことにつき正当な理由があることは否認する。

本件許可申請書の返戻は、被告代表者名義の、理由を付した返戻書によつており、被告の農業委員が前記1(二)第三段のとおり事情を説明し、本件許可申請の取下げを勧告したにかかわらず、原告がこれに応じないことからなされたものであるから、原告は、右返戻が右申請を却下する処分にあたることを知り、又は知り得たはずであつて、そうとすれば、原告は少なくとも前記審査請求の際、予備的に本件却下処分についての審査請求をもすることができたはずである。

3  予備的請求の原因に対する認否

(一) 予備的請求の原因(一)の事実については、主位的請求の原因(一)の事実に対する認否に同じ。

(二) 同(二)の事実は認める。

(三) 同(三)の事実は否認する。

本件許可申請には、前記1(二)(1)及び(2)の瑕疵があり、右瑕疵は相当期間内に補正される可能性がなかつたため、被告は右申請を不適法として本件却下処分をしたものであつて、右処分には何らの違法も存しない。

第三証拠関係〈省略〉

理由

(本件許可申請)

一  原告が、昭和五三年七月、茂吉と連名で被告に対し本件土地に係る農地法第三条の規定による許可申請(本件許可申請)をしたことは、原、被告間に争いがない。そして、成立に争いのない乙第一号証によれば、右申請の日は同月四日と認めることができる。

(被告の処分の有無――本件却下処分)

二  前掲乙第一号証、成立に争いのない乙第二号証、第九号証、第一〇号証の一、二、第一一、第一二号証の各一ないし三、第一三号証の一、二、第一四号証及び証人伊藤洋、同根元菊夫、同阿部慎、同上村隆一の各証言を総合すれば、(一)原告及び茂吉は、申請書中の許可を受けようとする土地の利用者氏名欄に「斎藤茂吉」、利用権原欄に「所有」と、権利を移転しようとする事由の種別欄に「自作地売買」と各記載して本件許可申請をしたこと、(二)被告は右申請を受理した後、昭和五三年七月二四日、農業委員根元菊夫(以下「根元」という。)に右申請があつたことを通知して意見を求め、根元は、翌日、原告及び茂吉の代理人上村隆一(以下「上村」という。)から事情を聴取した結果、本件土地は阿武隈川下流改修工事(金山築堤)予定地に含まれており、売買されることに納得できないとの理由で要調査の意見を提出したこと、(三)同年七月三一日開催された第二回被告総会において、本件許可申請については根元の右意見を受け入れて更に調査をすることになり、担任委員会の設置が議決され、三名の担任委員が指名されたこと、(四)右担任委員三名は、同年八月八日、第一回担任委員会を開き、原告及び上村の出席を求めて本件土地売買の事情について説明を受けたが、その際、本件土地の登記簿謄本に表示されている地番と公図上の地番とが相違していることを理由に一たん本件許可申請を取り下げ、右の相違を解消したうえで再申請するよう勧告したところ、右両名は、右取下げを拒否し、被告総会において許可又は不許可の処分をするよう求めたこと、(五)そして、同年八月二二日開かれた第二回担任委員会で、担任委員三名は、(1)調査の結果本件土地は宍戸が耕作しており、茂吉は東京在住の者であつて、前記(一)の各記載は事実に相違する、(2)本件土地は登記簿上は存在するが、公図上その所在が確認できない、との二点から申請に不実の記載が認められるため総会で審議されるべきものではなく、許可申請書を返戻するのが相当であるとの結論に達し、右結論は、同年八月二九日開催された第三回被告総会において承認されたこと、(六)これを受けて、被告は、同年八月三〇日、「不実の記載が認められたため」との事由を記載した被告会長名の返戻書を添付して本件許可申請書原本を茂吉及び原告に郵便で送付し、右郵便は、翌日頃右両名に配達されたこと、以上の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

更に、原告が、本件許可申請に対する被告の不作為につき、同年一〇月一二日、宮城県知事に対して審査請求をしたところ、同県知事が、昭和五七年六月四日、本件許可申請には瑕疵があり許可又は不許可の処分を行うことができないので被告は既に右申請に対して却下の処分をしているとの理由で、審査請求を却下する裁決をしたことは、原、被告間に争いがなく、成立に争いのない乙第四号証の一、二によれば、被告は、右審査請求手続において、昭和五三年一一月一三日宮城県知事に提出した弁明書の中で、本件許可申請については、前記(五)(1)及び(2)の事実が判明したので、申請書に事実を記載し、かつ登記簿と公図の地番が合致するよう書類を整備した上で改めて申請させる趣旨で本件許可申請書を返戻した旨弁明していることを認めることができる。

しかして、申請書の返戻行為が単に申請の撤回又は補正を促す事実行為か申請を却下する処分かは、行政庁がどのような意思で右返戻行為をしたのかの解釈に帰するところ、原告が被告担任委員会による本件許可申請の取下げ勧告を拒絶し、その時点で既に被告に対して右申請を撤回する意思がないことを明らかにしていること、被告の返戻書においては何らの補正を命ずる記載もないこと、許可申請書の原本を郵送で返戻しているものであること、更に、右返戻に至る経過、前記審査請求における被告の弁明の内容及び宮城県知事の裁決の内容等上叙確定した本件事実関係に徴すれば、被告の本件許可申請書の返戻行為は、本件許可申請を申請書に不実の記載がある不適法なものとしてこれを却下する意思でなされたものと認めるのが相当である。してみれば、右行為は、本件許可申請に対する却下処分(本件却下処分)というべきである。

もつとも、成立に争いのない乙第一九号証に弁論の全趣旨を総合すれば、昭和二七年一一月二五日付農林省農地局長名通達(二七地局第三七〇七号。以下「本件通達」という。)は、農地法第三条の許可申請に対する処分は、処分の種類(却下又は許可若しくは不許可)を明示し、かつ不利益処分(却下又は不許可)については行政不服審査法に基づく審査請求ができることを教示した一定様式の指令書を申請者に交付してこれをする旨定めており、農業委員会は右通達に拘束されるはずの立場にあること、行政行為がその相手方を一方的に拘束することからすれば、その存否、内容は相手方に誤りなく認識されるよう明らかであるべきであることにかんがみれば、農業委員会のなす農地法第三条の許可申請に対する処分は、本来右通達の定める様式の指令書によるべきものである。しかしながら、右通達自体は行政庁の内部文書にすぎず、実定法上右の許可申請に対する処分を一定の要式行為によるべきものとする規定は存しないから、右の処分の存否、内容についても、右指令書によらないからといつてそのことから直ちに右処分が不存在ということはできず、結局は、処分性が問題となつている行為についての行政庁の意思解釈によらざるをえない。そして、被告の本件許可申請書の返戻行為が前記判示したとおり申請却下の意思でなされたものと認められる以上、前記通達の存在の故をもつて、右行為により本件却下処分がなされたとの前記判断を妨げることはできないものというべきである。

以上によれば、本件訴え中主位的請求部分は行政事件訴訟法第三条第五項に定める要件を欠き、その余の点につき判断するまでもなく不適法なものといわざるをえない。

(予備的請求についての本案前の抗弁の当否)

三 農地法第八五条の二によれば、同法に基づく処分の取消しの訴えについては審査請求前置主義が採られているところ、原告が本件却下処分についての審査請求を経ていないことは、原、被告間に争いがない。

しかるところ、原告は本件却下処分についての裁決を経ないことにつき正当な理由があると主張するので、この点につき判断するに、原告が、本件許可申請に対する被告の不作為につき、本件却下処分(本件許可申請書の返戻行為)が原告に到達して後六〇日以内にあたる昭和五三年一〇月一二日宮城県知事に対して被告の不作為につき審査請求をしたことは、前記確定したとおりであるところ、成立に争いのない乙第三号証に弁論の全趣旨を総合すれば、原告は、被告の本件許可申請書の返戻行為は未だ何らの処分に該当せず、改めて処分の種類、理由を明示した文書による処分がなされるべきものと誤信して右の審査請求に及んだものであつて、仮に被告が本件許可申請に対してその処分性を明確にした文書、就中本件通達の規定する指令書によつてこれを却下したならば、原告はこれに対する適式な審査請求をする意思を有していたことを認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。そして、被告は本件却下処分を申請書の返戻という法令に基づかない、しかも本件通達に違背した明確性を欠く行為によつてしたものであつて、右行為が本件許可申請に対する却下処分であることは、前記審査請求手続における被告の弁明の内容、更には右審査請求に対する宮城県知事の裁決(これさえも、審査請求後三年八か月近くを経過し、本件訴えが提起された後に至つて初めてなされた。)を斟酌してはじめて原告に明らかになつたものというべく(尤も、右審査請求手続における被告の弁明の内容が原告に対し明らかにされたという経緯の存在を認めうる証拠があるわけではない。)、原告の前記誤信がひとえに被告の右不明確な行為によつてもたらされたことは容易に推認できるところである。以上の点にかんがみれば、原告に対し、本訴予備的請求をなすに先立つて、本件却下処分に対する審査請求を履践することを要求すること(本訴においては、それは同時に不服申立期間の徒過による不利益を原告に課することになる。)は原告に酷に過ぎ、被告の前記行為との間に公平を欠くことになつて相当でなく、原告には行政事件訴訟法第八条第二項第三号に規定する裁決を経ないことにつき正当な理由があるものというべきである。

(本件却下処分の違法性)

四 被告が本件許可申請書に不実の記載があることを理由として本件却下処分を行つたことは前記認定したとおりであり、右理由の趣旨が(一)本件土地は登記簿上は存在するが公図上はその所在が確認できないこと、(二)本件許可申請書の許可を受けようとする土地の利用者氏名欄に「斎藤茂吉」、利用権原欄に「所有」と、権利を移転しようとする事由の種別欄に「自作地売買」と各記載されているところ、被告の調査によれば、本件土地は宍戸が耕作しており、茂吉は東京在住の者であつて、右各記載は事実に相違する、の二点にあることは、既に判示したところから明らかである。

しかしながら、前掲乙第一〇号証の二、第一三号証の二、成立に争いのない乙第六号証の一ないし三、第七、第八号証、第一七号証及び証人上村隆一、同根元菊夫、同阿部慎の各証言(ただし、証人上村隆一の証言中後記措信しない部分を除く。)を総合すれば、本件土地及び宮城県伊具郡丸森町舘矢間舘山字南中島四一番三の土地(以下「四一番三の土地」という。)はもと一筆の同所四一番一の土地(以下「旧四一番一の土地」という。)であつたところ、これが二筆に分筆されたもので、両土地は互いに隣接していること、旧四一番一の土地は北側を道路を隔てて阿武隈川に、東側を同所字東中島四番二、南側を同所字南中島四二番、西側を同所字南中島三七番及び三八番二の各土地(以上の四筆を「隣接四筆の土地」という。)に囲まれていたが、阿武隈川の氾濫によつて土地が流失する等のことがあつて本件土地と四一番三の土地の所在及び境界に争いを生じたこと、そして、国土調査の際も右両土地の境界を確認することができなかつたため、公図には旧四一番一の土地に該当する部分につき、単に同所四一番の表示が記入され、枝番は記入されなかつたこと、しかしながら、現地において旧四一番一の土地の北側に接する道路及び隣接四筆の土地のそれぞれ旧四一番一に接する側の境界は一応確認することができ、これらによつて囲まれた土地(公図上四一番と表示されている土地に該当する。以下「甲土地」という。)の面積は一九三三平方メートルであること、右土地の所有権の帰属、範囲をめぐつて、本件土地の所有者茂吉(実際にはその妹の夫で本件土地を茂吉のために管理してきたと主張する上村)と四一番三の土地の所有者宍戸の間で紛争が存在し、その結果、本件土地が甲土地の全部又は一部を占めるのか否か及びその正確な所在を確定できない状態にあるけれども、地押図に記載されている本件土地と旧四一番三の土地の位置関係(後者は前者の北側に位置しているように記載されている。)を考慮すれば、本件土地が甲土地に含まれている可能性を否定できないこと、茂吉は本件許可申請当時、丸森町には居住しておらず、甲土地はその数一〇年前から宍戸が桑畑として耕作してきたものであるが、同人は別段本件土地についてその所有者から地上権又は永小作権の設定を受けていないこと、以上の事実を認めることができ、証人上村隆一の証言中右認定に反する部分は前掲各証拠に照らしてたやすく措信できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

しかして、上叙の認定事実によれば、本件土地はその所在が全く不明というわけではなく、仮に存在するとすれば甲土地の全部又は一部に該当することになるのであるから、被告としては、これを前提として本件土地につき農地法第三条第二項各号の事由(以下「不許可事由」という。)の有無を判断すべきであつて、右判断が不可能な程度に本件土地の所在が不明であるとは到底認めることができない。

のみならず、前記(二)の点についても、前叙認定した事実関係に照らせば、本件許可申請書の右の点に係る記載は必ずしも正確ではないにしても果して本件土地を宍戸の小作地と認めることができるかどうか疑問の余地がないでもなく、仮に許可申請書中の所掲の記載事実と被告の調査結果とが相違する場合には、被告は自らの調査結果によつて事実関係を確定し、これに基づいて本件許可申請につき不許可事由の有無に関する実体判断をすべきものというべく、右の点の相違は未だ本件許可申請の不適法をもたらすものではなく、これを理由に許可不許可の実体判断を拒むことはできないものというべきである。

以上によれば、被告の挙示する前記(一)及び(二)の事由をもつて本件許可申請を不適法とすることはできないにかかわらず、これを理由に右申請を却下した本件却下処分は瑕疵ある違法なものといわざるをえないから、取消しを免れない。

(むすび)

五 以上の次第であるから、原告の本件訴え中主位的請求部分は不適法であるからこれを却下し、予備的請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 櫻井敏雄 信濃孝一 佐藤道明)

(別紙省略)

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